E235系の投入が決まり去就が気になる横須賀線・総武快速線のE217系であるが、そんなE217系で見られる(そしてE235系でも見られることになると思われる)珍しいシーンが、横須賀線田浦駅に存在する。それがいわゆる「ドアカット」である。
本記事では、JR横須賀線田浦駅のドアカットの様子について、簡単に紹介したい。
編成をホームからはみ出した状態で停車させる場合などに、「ドアカット」と称される「駅停車時、一部ドアを開けない」という措置が取られることがある。昔に比べれば珍しくなってきた現象だが、首都圏近辺だと今でも東武浅草駅(8両編成の北千住寄り2両)、東急大井町線の九品仏駅(5両編成の溝の口寄り1両)、江ノ電の腰越駅(4両編成の鎌倉寄り1両)などで見られる。
横須賀線の田浦駅でも11両編成の場合にドアカットが発生するため、該当するドアにはその旨を知らせるステッカーが貼られている。
実際、該当するドアは田浦駅に停車しても開かない。停車進行方向側(写真左)はトンネルの壁が見えており、さらに1号車は完全にトンネルに入っているような形だ。
ところで田浦駅のドアカット形態は少々珍しく、それは「上下線共に、先頭車両+次の車両の1ドアが開かない(後方車両はホームに収まる)」という点にある。
下り列車の場合、2両目の1ドア目が完全にホーム端の位置にあるため、ギリギリ開くことができない。これにより、同じ車両でも1ドア目のみ開かず、2〜4ドア目のみ開くという珍しい状態になっている。
一方、ちょうどその反対側にあたる上り列車後方はギリギリホームに収まっており、1号車全てのドアが開き、車掌がホームに出て発車ベル扱いを行うスペースまで確保されている。
また田浦駅の場合、上下線いずれも「先頭車両側」がトンネルに侵入しドアが開かない。下り横須賀・久里浜方面の先頭車両側(1・2号車)がトンネルに入り後方車両(〜11号車)は全てホームに収まっているが、一方で上り逗子・大船方面も先頭車両側(11・10号車)がトンネルに入り後方車両(〜1号車)は全てホームに収まる。
このような運用になっているのは、主に車掌がホームに出られるような停車位置に合わせるためだと考えられる。一方、先に挙げた3例ではドアカットされる車両が「○○方面側」となっており、また全国的にも(各種事情が異っている上で)どちらかというと後方車両のドアカットの方がよく見られるようだ。
ではそもそも、何故田浦駅でドアカットをする必要があるのか、つまり何故ホームが短いのだろうか。それは、田浦駅が山に囲まれ両端をトンネルとしなければならない位置に作られたためであると考えられる。なんとか10両弱の長さは確保できるため、ドアカットの措置込みで11両編成が走らせられる状態となっている。
この位置に駅が作られたのも当然いろいろ理由があるとは思われるが、例えばもし田浦駅がトンネルの逗子側(地図上の自衛隊横須賀病院・田浦郵便局のあたり)に作られていたとしたら、ホームの延長が容易になりドアカットは発生していなかったのかもしれない。
なお田浦駅には、逗子-久里浜間を走るE217系の増結部分を利用した4両編成の列車が走ることもある。そのため4両編成はホーム中程に停車し、ドアカットも発生しない。現在のダイヤでは日中の半数以上が4両編成での運転となっているため、日中は上下線それぞれ1時間に1回程度しかドアカットが発生していないことになる。