2014年の運転開始から6年!相鉄特急の歴史

いずみ野線系統の特急に充当された8両編成の10703F・7710F(2014/4/27)

いずみ野線系統の特急に充当された8両編成の10703F・7710F(2014/4/27)

2014年4月27日(日)、相鉄線で新種別「特急」の運転が始まった。それからちょうど6年経過したこの機会に、相鉄線内を走る特急について、簡単ではあるがなるべく多面的に振り返ってみたい。

特急運転開始(2014/4/27改正)

相鉄特急運転開始初日14時前の横浜駅発車標(2014/4/27)

相鉄特急運転開始初日14時前の横浜駅発車標(2014/4/27)

2014年、相鉄線に新たな種別として「特急」が運転されることが発表された*1 。停車駅は、本線系統が横浜・二俣川・大和・海老名、いずみ野線系統が横浜・二俣川・いずみ野・湘南台であった。それまで長い間優等列車(急行・快速)でも各駅に停車していた区間での通過運転が開始されることになり、横浜-海老名間の最速所要時間は26分、横浜-湘南台間は24分とそれぞれ6分程度も短縮された。

当初は日中毎時4本の運転で、2本が本線系統(横浜-海老名間)、2本がいずみ野線系統(横浜-湘南台間)の運転であった。特急は二俣川で他方面の各駅停車と接続していたものの、この時点では「追い抜き」を行うダイヤではなかった。

またこのダイヤ改正では、それまで長い間各方面の主軸の優等列車となっていた海老名方面の急行・湘南台方面の快速が日中ダイヤから一旦消滅した一方で、海老名方面の快速が初設定された他、日中ダイヤに横浜-海老名間や二俣川-湘南台間の各駅停車が設定された。

湘南台駅1番線に停車中の8両編成7710F特急横浜行き(2014/4/27)

湘南台駅1番線に停車中の8両編成7710F特急横浜行き(2014/4/27)

この時、いずみ野線系統の特急には主に8両編成が充当されていた。最速の優等列車が短い編成となるのは大手私鉄の無料優等列車としては珍しいケースだが、実際にいずみ野線系統の特急は非常に空いていたのを考えると妥当であったとも言える。また8両編成運用のため、当時既に貴重だった7000系*2も充当されやすかった。

湘南台方面の特急が毎時1本に減便(2015/5/31改正) 

特急運転開始から1年ほどが経ち、さっそく相鉄線のダイヤに修正が入ることになった*3

2015年5月31日のダイヤ改正では、横浜-海老名間の急行・横浜-湘南台間の快速が復活した他、利用実態に合わせていずみ野線系統の特急が毎時1本に減便となった。

いずみ野駅で緩急接続するようになった8両編成の特急・各停湘南台行き(2015/7/26)

いずみ野駅で緩急接続するようになった8両編成の特急・各停湘南台行き(2015/7/26)

この時、毎時1本のいずみ野線系統の特急は、下りで言えば横浜「毎時45分発」という、約10分毎に運転されていた他の優等列車とは違うタイミングに設定された。このダイヤで湘南台行きの特急は、星川・いずみ野の2箇所で各停湘南台行きを追い抜くダイヤとなっており、久々に日中の星川通過待避が見られるようになった他、2面4線のいずみ野駅での緩急接続が開始されることになった。

また、海老名方面の各駅停車が走るタイミングも変更になり、基本的に海老名方面の特急は二俣川で海老名方面の各駅停車を「追い抜く」形での接続が常となった。

特急運転時間が徐々に拡大

2015年6月
2018年12月
大和駅掲示されていた「平日・朝の横浜駅への到着時刻について」(2015年/2018年ダイヤ改正版)

2015年のダイヤ改正ではこのほかに、平日朝に上り特急が新たに4本設定された。これらの特急は瀬谷で先行の急行や快速を通過追い越しするダイヤとなっており、瀬谷駅4番線が「待避線」として有効活用され始めたことになる。また特急の運転時間帯も拡大し、平日9時台や土休日7-19時台にも特急が運転されることになった。

2017年3月のダイヤ改正*4では朝ラッシュ時間帯の特急がさらに増発され、最ピーク時を含め概ね15〜20分間隔で上り特急が走るようになった。この時、日中の上りダイヤが全体的に10分ほど後ろ倒しになり、8両編成の運用形態なども変化している。

2018年12月のダイヤ改正*5では、土休日の早朝に海老名行きの特急が追加されている。また、高架化工事の完成により特急・急行の上り一部列車で所要時間が1分程度短縮されている。

JR直通開始で特急の運転系統も再構成(2019/11/30改正)

特急の登場から5年半以上が過ぎたところで、相鉄のダイヤ、あるいは特急の役割がさらに大きく変わることになる*6。JR線への直通開始に伴い、新宿方面の列車の約半数以上は「特急」として運転されることになった他、JR方面との分岐駅となった西谷駅にJR直通・横浜方面共に全ての特急(と快速)が停車することになった。横浜-二俣川間に限れば、特急よりも急行の方が停車駅が少ないという不思議な状態となっている。

なお、このタイミングで日中に運転されていた湘南台方面の特急は廃止された。代わりに平日朝上りにいずみ野線始発の優等列車として通勤特急(いずみ野・二俣川・鶴ヶ峰・西谷停車)・通勤急行(西谷まで各駅停車/一部海老名始発あり)が設定される形となった。

細かいところだと、午前中~12時台にかけて、JR方面からの直通列車が不等間隔で多数設定された影響もあるためか、瀬谷駅下りホームで特急(JR方面/横浜始発問わず)が急行や快速、各停を通過追い越しするケースが生まれた。

西谷駅に停車中の7754F特急海老名行き(2020/2/8)

西谷駅に停車中の7754F特急海老名行き(2020/2/8)

横浜-海老名間の特急は、日中のパターンダイヤ上では毎時3本、30分等間隔の2本+もう1本という形で設定されている。この1本は西谷でJR直通の「各駅停車」に接続する形となっており、この前後30分のタイミングでは逆にJR直通の「特急」と横浜発着の「快速」が西谷で接続する形である。実質的に日中の横浜-海老名間は特急ベースでの移動が毎時4本できることになっているが、JR直通列車が相鉄線内で特急・各停交互に設定されている*7影響により、一見複雑なダイヤとなっている。

この他、平日下り夕ラッシュ時はJR方面からの列車がほぼ全列車「特急」となり、それに対応する形で横浜始発の「快速」が、時間帯によって湘南台行き・海老名行き両方のケースがあるが設定されている。

12000系(二俣川2番線・2020/2/27)
E233系(二俣川1番線・2020/2/29)
JRから直通してきた相鉄12000系、JR埼京線E233系の特急海老名行き(2020/2)

JR方面からの列車は、日中の半数と平日朝夕ラッシュ時の大半を中心に特急として運転されることが多い。直通開始によって、早朝・深夜を含めた終日にわたって比較的高頻度で西谷-海老名間で特急が走るようになったと言える。

JR直通向けに製造された12000系の他、埼京線を走っている緑ラインのE233系相鉄線内を特急として運転することが大いにある。JRの通勤車両に「特急」という文字が表示されるという点も話題になった。

JRから来る直通特急は、正確には羽沢横浜国大駅から種別を「特急」に変更する。種別色は、従来相鉄線を走っていた特急と同じオレンジ色である。

12000系(大和・2019/12/1)
E233系(海老名・2020/1/21)
JRへ直通する、種別が緑色表示の相鉄12000系・JR埼京線E233系特急(2019/12、2020/1)

一方、JR方面に向かう直通特急は、相鉄線内では横浜方面への列車と区別するため緑色の文字で「特急」と表記される。なお、JR方面の列車は各駅停車でも緑色の文字で「各停」と表記されている。

また、平日朝ラッシュ上りのJR直通列車は基本的に特急として運転されており、新宿より北まで直通する列車(原則E233系充当)も存在する。平日朝ラッシュ時の横浜行きの特急も何本か残ってはいるものの、最ピーク時は基本的に特急がJR直通、横浜方面へは急行・各停が主となっている。

なお相鉄線内特急列車であっても、海老名・大和-新宿間の所要時間は小田急を利用したほうが断然早い。都心直通プロジェクトのサイトで所要時間例として示されている「二俣川-新宿」「海老名-武蔵小杉」あるいは西大井・大崎・恵比寿への利用に対しては格段に早くて便利なものとなっている。

相鉄特急と相鉄線ダイヤの今後

将来的に東急線に直通する車両となる相鉄20000系20101F(2019/7/28) JR直通開始前日に踏切事故で運用を離脱するも、先日無事復帰したとのこと

将来的に東急線に直通する車両となる相鉄20000系20101F(2019/7/28)
JR直通開始前日に踏切事故で運用を離脱するも、先日無事復帰したとのこと

2022年度下期には相鉄・東急直通線が開業予定であり、相鉄線の運転系統が再び大きく見直されるタイミングとなる。都心直通プロジェクトのサイトでは「二俣川-目黒間38分」「大和-新横浜間19分」という所要時間(予定)が提示されており、この時間設定をみるにおそらく東急線方面直通列車には相鉄線内を特急で運転する列車が設定されるものと思われる。また「大和-新横浜」の所要時間が提示されているのを間に受ければ本線系統の東急直通特急は設定されそうだが、JR方面と違って湘南台方面の列車が、そしてその場合に特急が設定されるのかも気になるところである。

またそれまでの間にも、JR線直通列車の利用実態に合わせてダイヤが見直されることも考えられる。JR線直通列車は、平日の朝ラッシュ上りや夕ラッシュ下りは徐々に定着している利用実感はあった一方、他の時間帯は(外出自粛前の時点でも)未だに比較的空いている状況である。また特急が主にJR方面の列車となった影響として、平日朝ラッシュ時の本線二俣川以西(特に瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘)から横浜への有効列車が減少したという問題点もある。年度が変わり、いやそれ以前に時勢の影響で利用率が本来通りでないなど想定外な状況ではあるが、次のダイヤ改正があった際にどの時間帯についてどのように見直されるだろうか。

相鉄特急は、従来の相鉄沿線と横浜を結ぶ役割に加え、相鉄沿線と都心方面を結ぶ役割も持ち始めている。どの役割にどの程度の力を割いたダイヤになるのか、今後も注目していきたい。

*1:4月27日(日)、相鉄線のダイヤ改正を実施 特急の導入により速達性の向上を図ります(2014/3/10 相模鉄道株式会社)

*2:2019/10/14、さがみ野駅での撮影会にて最後の編成であった7710Fが引退した。参考:相鉄・JR直通線の開業を記念して相鉄「7000系」「12000系」の撮影会を開催記念入場券セットやグッズの販売も(2019/9/27 相模鉄道株式会社)

*3:5月31日(日)、相鉄線のダイヤ改正を実施朝ラッシュ時間帯の前後にも特急運転を開始(2015/4/27 相模鉄道株式会社)

*4:相模鉄道本線(星川駅~天王町駅)連続立体交差事業の進展に合わせ3月18日(土)相鉄線はダイヤ改正を実施(2017/2/16 相模鉄道株式会社)

*5:相鉄線星川駅~天王町駅間の全線高架化により12月8日(土)新ダイヤでの運行を開始一部上り列車の所要時間を最大1分短縮(2018/11/9 相模鉄道株式会社)

*6:2019年11月5日直通運転開始により都心へのアクセスが向上二俣川~新宿最速44分11月30日(土)相鉄線のダイヤ改正を実施平日朝のラッシュ時間帯に通勤特急・通勤急行を導入(2019/11/5 相模鉄道株式会社)

*7:利用状況を見て今後どちらかに統一されるのか…とも思ったが、JR線内のダイヤが現状通りの場合、上り下りで片方が特急・片方が各停の時にのみ海老名駅での折り返し時間がちょうど良い10分程度となる。E233系を含めた直通車両の運用を平気で横浜方面に入り込ませたりしない限りは、当面はこのパターンのままであると思われる。