相鉄JR直通線開業ダイヤ改正、平日朝ラッシュで気になる点3つ

相鉄JR直通線の開業して2日経ち、少なくとも運行面に関しては大きな遅延やトラブルもなく順調だったと感じられる。しかし本番はこれからで、平日朝の通勤ラッシュを上手く捌けるかによって直通運転の評価は変わってくるだろう。

本記事では、主に平日朝通勤ラッシュ時のダイヤを焦点に、直通列車や相鉄・JRの改正路線に関する懸念事項を、特に3点ほど紹介したい。

1. 羽沢横浜国大-武蔵小杉間は実質15分以上かかる?

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「1駅なのに15分かかる」ということでも話題になったこの区間。朝ラッシュ上りに関しては、時刻表を見る限り所要時間はさらに長く、16〜17分ほどである。

他路線の優等列車で15分以上無停車のものは存在するが、この区間の場合は貨物線経由で「途中駅」が存在しないため、「輸送障害時に下車できるようになるまで時間がかかる」というリスクが他の列車・路線と比べても高いと言える。

所要時間増大のリスクはそれだけではない。直通列車は武蔵小杉から既存の横須賀線の線路に合流するが、朝ラッシュのピーク時には直通列車の2〜3分前に横須賀線湘南新宿ライン(快速)の列車が発車予定である。つまり横須賀線が2分程度遅延するだけで、相鉄からの直通列車は武蔵小杉手前で一時停止するハメになる。

以上を踏まえると羽沢横浜国大-武蔵小杉間は、朝ラッシュ時は少なくとも「20分」程度はかかるものと考えておいた方が安心かもしれない。

2. 武蔵小杉駅のホーム混雑はどうなる?

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平日朝の通勤ラッシュ時はホーム上に多くの乗客が滞留し、また新南口改札外の行列も話題となったJR武蔵小杉駅横須賀線ホーム。相鉄からの直通列車は他でもないこのホームを発着するが、そんな背景からも武蔵小杉のホーム混雑を心配する声はよく聞こえてくる。

武蔵小杉の混雑は、実は解消に向かう可能性もある。直通列車の追加は、新宿方面への「増発」でもあるからだ。武蔵小杉発7・8時台において湘南新宿ラインは10本で維持されているが、そこに相鉄からの直通列車8本が加わる。ラッシュ時の武蔵小杉から新宿方面への運転本数は1.8倍にもなるのだ。車両数≒輸送定員ベースで考えても約1.6倍である。よって新宿方面への乗客がホームに滞留する時間が減るため、混雑解消に繋がるというわけである。

これが上手くいくかどうかは相鉄からの直通列車の混雑次第と言える面もあり、武蔵小杉時点で十分混雑している場合には、新宿方面への乗客が乗り切れない可能性もある。ただしそれらの乗客の多くは「相鉄横浜経由・湘南新宿ライン乗車」から振り替えた乗客と考えられるため、その分湘南新宿ライン(特に横浜で相鉄から乗り換えやすい後部車両)の混雑が解消しているのでは、という面もある。

逆に、混雑や混乱への懸念事項もいくつか挙げられる。まず、直通列車を武蔵小杉で下車する乗客もいるという点である。武蔵小杉に通勤通学する乗客や南武線に乗り換える乗客がホームから降りるために、階段・エスカレーター付近が混雑する。また、品川方面に向かうため乗り換える乗客や折り返し新川崎に向かう乗客に関しては、ホーム上に滞留し続けることになる。品川方面への乗り換えは西大井駅でも可能なので、ホーム混雑と直通列車自体の混雑とのバランス次第で、西大井乗り換えを推奨する案内が為されるかもしれない。

他の懸念事項として、相鉄からの直通列車が10両編成、かつ最後尾10号車が女性専用車*1であるという点である。元々ピーク時は横須賀線湘南新宿ライン全列車が15両編成*2だったが、そこに10両編成の列車が挟まることになる。写真に示すように、10両編成は柱番号5〜14番付近の停車のため、臨時改札から入るなどして柱番号1〜4番付近(男性なら5番付近も含む)に並んだ乗客はその位置からは直通列車に乗車できず、乗車可能な位置に移動しはじめる可能性があるのだ。これは、停車時間や遅延が増大する要因になり得る。

また、横須賀線&湘南新宿ライン・相鉄からの直通列車のいずれかが大幅に(具体的には横浜方面からの列車2本分≒約5分)遅延した場合、運転順序が変更となることも考えられる。西大井や新宿方面への先着列車が変更となった場合、先述の10両編成&女性専用車問題が格段に大きなものとなってくる。

(2019/12/7追記)平日朝ラッシュの武蔵小杉駅横須賀線ホームについて、ある程度観察したものを記事に書いたので、開業直後の実態としてこちらもご参照いただければ幸いである。

tyobi-train.hateblo.jp

3. 瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘から乗車できる横浜行きの急行が減った!?

三ツ境駅平日上りラッシュ時の新ダイヤ

三ツ境駅平日上りラッシュ時の新ダイヤ

うって変わって相鉄側だが、朝ラッシュ上りは「JR直通特急」「いずみ野線系統の通勤特急・通勤急行」が設定され、便利になる乗客も多い。その一方で「瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘からの横浜行き急行が減便になった」という点が気になる。

ダイヤ改正前は、三ツ境上り6:59発〜8:51発が全て急行または快速で、全て横浜に先着する列車だった。

しかし本改正により、総本数こそほぼ維持されたものの、急行・快速の一部が各駅停車に置き換えられた。これにより瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘から横浜へは「乗り換え無しで横浜に先着できる列車」が10分以上来ないケースが多数発生してしまった。ダイヤ改正前の「何も考えずに乗れば横浜に先着できた」という状況ではなくなり、各駅停車の直後の急行がこの3駅で大幅に混雑してしまう恐れがある。

ただし、各駅停車がまったく利用できない列車というわけではない。

三ツ境7:14発・7:32発・7:47発、8:02発の各駅停車は、二俣川-西谷間で後続の「湘南台始発の通勤特急(通勤急行)」に乗り換えることで横浜に先着することが可能である。とはいえ、乗り換えが発生する上に列車がより混雑した二俣川以降で先着列車に乗車することになるので、瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘から横浜への乗客にとってあまり好ましい変化ではないかもしれない。

またこれらの各駅停車は、同時に「JR直通特急」への有効列車でもあるため、その意味でも乗客の分散が狙える。もっとも、開業当初は定期経路切り替えがそれほど発生しないであろうことを考えると、直近は特に、各駅停車直後の急行に乗客が集中してしまうことになるかもしれない。

おわりに

以上、3テーマに絞ってではあるが、相鉄JR直通線にまつわる平日朝ラッシュダイヤが開始する前に気になる点を取り上げてみた。本記事で紹介した以外にも、相鉄線の瀬谷・三ツ境・希望ヶ丘以外の駅からの観点や、女性専用車位置変更の相鉄線内での影響、埼京線内の列車順序変更(相鉄との相互直通列車が込みになる)の影響など、不安な点を挙げればキリがない。

ダイヤ面以外だと、横浜経由の定期で、直通線(羽沢横浜国大経由)の経路に乗車する場合、来年3月のダイヤ改正までは下車駅の自動精算機で精算が必要なため、相鉄沿線の方でまず1回直通列車を試そうとお考えの方はご留意を。

直通運転の開始自体は、相鉄沿線から都心部に向かう乗客の選択肢を増やすという意味では間違いなく意義深いことであるので、各種懸念点による負の影響が最小限で済むことを願いたい。

*1:武蔵小杉のホームで混雑するのはどちらかというと東京側なので、その観点では女性専用車の設定位置は妥当と言える。一方、海老名駅で唯一の改札側に設定されることになるのは懸念事項と言える。

*2:ラッシュ時周辺だと、7:00発の湘南新宿ラインが10両、8:50、8:56発の横須賀線が11両である。