8/8(土)豊肥本線4年ぶりに全線開通!特急ダイヤは4年前とどう違う?

立野駅に停車中のキハ185系特急九州横断特急4号別府行き(2008/2/25)

立野駅に停車中のキハ185系特急九州横断特急4号別府行き(2008/2/25)
なお2016年3月改正以降、大分・別府方面の列車は奇数号に変化している

平成28年熊本地震」の影響で長い間分断されていた豊肥本線が、2020年8月8日(土)に全線開通する。それに伴い運転が再開される熊本-大分(・別府)間の特急列車について、先日JR九州から発表された。概要としては、土休日を中心に「あそぼーい!」号が熊本-大分・別府間で運転され、また熊本-大分・別府間を結ぶのは全日程において1日2往復となる。

本記事では、全線運転再開時点での特急ダイヤについて、運休前の豊肥本線の特急ダイヤとの変化を簡単に比較してみたい。あくまで運転再開ダイヤ自体を知りたい方は、下記プレスリリースや「復旧後のダイヤ(2020/8/8〜)」の項目をご参照いただければと思う。

参考:豊肥本線全線開通に伴う特急列車の運行体系について~特急「あそぼーい!」が熊本~大分・別府で直通運転~(JR 九州2020/6/16)

九州横断特急の人吉直通時代(〜2016/3/25)

豊肥本線の特急事情は様々な要因で数年ごとに変化しているが、その中でも特に大きな変化があったと言えるのが熊本地震直前の2016年春ダイヤ改正である。それ以前と以後で「九州横断特急」の運転携帯などがやや大きく変化しているためである。

というわけで、まず2015年度までのダイヤを見てみたい。

(以下、設定列車と主要停車駅の発着時刻を掲載する。)

下り(大分方面)ダイヤ 

運転日 列車名   熊本発 阿蘇 宮地(発) 大分着 別府着
定期 九州横断特急2号 ※1 8:35 9:44 9:50 11:27 11:38
臨時 あそぼーい!101号   10:28 11:55 12:00    
定期 九州横断特急4号 ※1 11:39 12:48 12:52 14:29 14:40
臨時 あそぼーい!103号   13:54 15:19 15:23    
定期 九州横断特急6号 ※1 15:04 16:13 16:17 18:00 18:14
定期 九州横断特急8号 ※1 18:24 19:33 19:38 21:18 21:31

※1:人吉始発

上り(熊本方面)ダイヤ

運転日 列車名 別府発 大分発 宮地発 阿蘇 熊本着  
定期 九州横断特急1号 7:50 8:10 9:53 9:57 11:08 ※2
臨時 あそぼーい!102号     12:22 12:27 13:41  
定期 九州横断特急3号 11:44 11:56 13:40 13:44 14:49 ※2
臨時 あそぼーい!104号     15:38 15:42 17:14  
定期 九州横断特急5号 14:46 15:03 16:43 16:47 17:54 ※2
定期 九州横断特急101号 18:30 18:43 20:24 20:28 21:34 ※3

※2:人吉行き ※3:熊本で「くまがわ3号(人吉行き)」に接続

概要

2015年度までは、定期列車として九州横断特急が人吉・熊本-別府間を4往復、臨時列車としてあそぼーい!号が熊本-宮地間を2往復していた。

2016年度以降の「九州横断特急」との大きな違いが2点ある。1つ目は、ほとんどの列車が熊本を越えて肥薩線の人吉まで直通していたことである。2004年の九州新幹線部分開業時に特急「あそ」と急行「くまがわ」を統合する形で「九州横断特急」が生まれ、2016年3月までそのような形態で運転されていた。

2つ目は、号数の奇数偶数の扱いである。肥薩線の号数付番に合わせるような形で熊本・人吉方面が奇数号となり、豊肥本線内を走るあそぼーい!号とは同じ方面の列車でも偶奇が違う列車となっていた。同じ「101号」でもあそぼーい!号は熊本から東に向かう列車、九州横断特急は東から熊本に向かう列車となっていた。

熊本地震直前のダイヤ(2016/3/26〜2016/4/14)

2016年春改正通りのダイヤで運転された期間自体は、地震の影響で3週間足らずとなってしまった。しかしこのダイヤ改正の内容自体は、豊肥本線の在り方が変わることを示していたと言える。

下り(大分方面)ダイヤ

運転日 列車名 熊本発 阿蘇 宮地(発) 大分着 別府着
定期 九州横断特急1号 8:34 9:46 9:50 11:27 11:38
臨時 あそぼーい!101号 9:47 11:02 11:06    
定期 九州横断特急3号 11:39 12:49 13:03 14:30 14:42
臨時 あそぼーい!103号 13:54 15:18 15:22    
定期 九州横断特急5号 15:04 16:14 16:18 18:00 18:14

上り(熊本方面)ダイヤ

運転日 列車名 別府発 大分発 宮地発 阿蘇 熊本着
定期 九州横断特急2号 7:50 8:10 9:52 9:57 11:08
臨時 あそぼーい!102号     11:28 11:34 13:04
定期 九州横断特急4号 11:45 11:58 13:40 13:44 14:49
臨時 あそぼーい!104号     15:43 15:49 17:14
定期 九州横断特急6号 14:52 13:40 16:44 17:14 17:54

概要

2015年度からの九州横断特急の変化として、「肥薩線(人吉)直通が無くなり、全列車が熊本-別府間での運転に」「号数の奇数偶数があそぼーい!号と揃う(奇数号が大分方面、偶数号が熊本方面)」「4往復から3往復に減便」という点が挙げられる。前2点は前章で述べた通りである。ちなみに肥薩線側では、人吉-吉松間で運転されていた「いさぶろう1号・しんぺい4号」が熊本-人吉間延伸(この区間のみ特急)という形になっている。2017年春改正以降は「かわせみ・やませみ」号も運転開始となった。

豊肥本線内のダイヤ変化としては、あそぼーい101・102号の時刻が1時間ほど早まったのに加え、夕方〜夜を走っていた九州横断特急1往復が削られ計3往復の運転となった。この段階で、各種利用状況に応じて運転系統・本数が整理されたと言える。

豊肥本線運転見合わせ期間と特急

熊本地震以後は、復旧状況に合わせて阿蘇・宮地-大分・別府間で特急の運転が再開された。

詳細な変遷は省略するが、ここでは2点ほど取り上げる。

あそぼーい!号

ハウステンボス駅発着で運転されたキハ183系特急あそぼーい!(2016/12/24)

ハウステンボス駅発着でも運転されたキハ183系特急あそぼーい!(2016/12/24)
豊肥本線全線開通後は再び熊本駅で見ることができるようになる

豊肥本線の主に熊本-宮地間で運転されていた観光特急「あそぼーい!」号は、2016年5月以降に九州内の他の線区で運転された。5月3日より土休日などに博多-門司港間で運転された他、10-12月には博多-ハウステンボス間でも運転された。

2017年7月以降は、主に豊肥本線阿蘇-大分間で運転されている。

現在のダイヤ(2020年3月改正時点)

そして現在、阿蘇-別府間を毎日1往復、あそぼーい号or九州横断特急が走るようなダイヤで設定されている。時刻設定としては、大分県側からの観光・往来を意識したようなものになっている。

下り(大分方面)
運転日 列車名 阿蘇 宮地着 大分着 別府着
(金土休) あそぼーい!91号 16:12 16:17 17:57 18:14
(平日) 九州横断特急71号 16:12 16:17 17:57 18:14
上り(阿蘇方面)
運転日 列車名 別府発 大分発 宮地発 阿蘇
(金土休) あそぼーい!92号 10:05 10:29 12:13 12:17
(平日) 九州横断特急72号 10:05 10:29 12:13 12:17

なお実際には、ここ最近は時勢の影響でどの列車も運休となっている。6/19以降は九州横断特急として運転され*1、状況次第であそぼーい!号も運転再開されていくと思われる。

復旧後のダイヤ(2020/8/8〜)

そして先日発表されたように、復旧後の特急ダイヤは以下の通りになった。

下り(大分方面)ダイヤ

運転日 列車名 熊本発 阿蘇 宮地着 大分着 別府着
(土休) あそぼーい! 9:09 10:25 10:35 12:17 12:32
(平日) 九州横断特急71号 9:09 10:25 10:35 12:17 12:32
臨時 あそ1号 9:51 10:58 11:04    
定期 あそ3号 11:45 12:59 13:07    
臨時 あそ5号 13:39 14:56 15:12    
定期 九州横断特急3号 15:05 16:12 16:17 17:57 18:14

上り(熊本方面)ダイヤ

運転日 列車名 別府発 大分発 宮地発 阿蘇 熊本着
定期 九州横断特急2号 7:51 8:07 9:55 10:04 11:12
臨時 あそ2号     11:55 12:03 13:17
定期 あそ4号     13:32 13:39 14:47
臨時 あそ6号     15:48 15:53 17:06
(土休) あそぼーい! 15:12 15:25 17:05 17:11 18:29
(平日) 九州横断特急74号 15:12 15:25 17:05 17:11 18:29

概要

まず、熊本-大分・別府間を結ぶ特急は2往復の運転となった。復旧前の3往復の時代から昼頃の1本が減便(短縮)となっており、またそれ以前の4往復からは豊肥本線全通特急が半減したことになる。長期の運休を挟んだことなどもあり、需要を控えめに見ているのかもしれない。

一方、熊本-宮地間で見れば、定期便3往復・臨時便2往復という本数は維持されている。大分への直通は1往復減ったものの、熊本県内の特急本数は2016年ダイヤ改正時と変わらないことになる。

そして、列車構成が変化している。観光特急の「あそぼーい!」号は、現在大分側で運転されていることもあってか、熊本-大分・別府の豊肥本線全通ルートで運転されることになった。あそぼーい号が運転されない日は九州横断特急が運転される、というのも現状の運転方式通りである。

また、熊本-宮地間を運転する新設特急が「あそ」号と命名された。列車名としては、九州横断特急運転開始前に豊肥本線で運転されていた「あそ」が復活したような形である。あそぼーい!号が豊肥本線区間運転の列車に用いられるのもあって、臨時列車という形でも「あそ」号は用いられる。

運転本数の変遷

最後に、本記事で紹介した特急(豊肥本線全通時)の運転本数を区間ごとに簡単にまとめてみた。豊肥本線の熊本-大分間を全通する特急が減少傾向にある、というのは一つ大きな流れと言える。

  (人吉直通) 熊本-宮地間 宮地-大分・別府間
~2015年度 3.5往復 4(+2)往復 4往復
2016年度(地震前) なし 3(+2)往復 3往復
2020年度(再開後) なし 3(+2)往復 2往復

まとめ

高架化前の熊本駅4番線に停車中のキハ185系九州横断特急4号別府行き(2014/7/19)

高架化前の熊本駅4番線に停車中のキハ185九州横断特急4号別府行き(2014/7/19)

以上、豊肥本線全線開通に伴う特急の運行体系が発表されたのを機に、熊本地震前の特急ダイヤとの比較も添えて簡単に各ダイヤを眺めてみた。運転本数は(震災前の段階から)減らされる傾向となっているが(この辺りの考察を深めるにはさらに前のダイヤや九州全体の移動需要について分析していく必要があるかもしれない)、まずは復旧自体が大きな前進であると言える。

また、豊肥本線沿線としては、立野駅で接続している南阿蘇鉄道の復旧状況も気になるところであり、また熊本空港アクセスの鉄道の計画もある。それらも含めて、今後の阿蘇周辺の観光需要回復を願いたいところである。