間もなく迎えるダイヤ改正で定期運用(平日の湘南ライナー)が終了となり、去就が注目されるオール2階建て車両・215系。毎年のように主に春〜秋にかけて土休日に215系で運転されてきた「ホリデー快速ビューやまなし号」の記載が2021年春の臨時列車一覧にもなく、いよいよ引退が現実的となっている。
本記事では、昨年秋に乗車した215系「ホリデー快速ビューやまなし号」の上り列車(小淵沢始発・新宿行き)の乗車レポートを簡単に記したい。
乗車・車内設備観察
小海線方面からの帰り、小淵沢16:16発という観光帰りにちょうど良い時間に走る「ホリデー快速ビューやまなし」号のグリーン指定券を予め購入しておき、乗車した。なお1〜3・8〜10号車は自由席なので、一応指定券を購入せずとも乗車できる列車であった。
215系側面の行先表示は方向幕となっており、また前面にも列車名の表示幕がある。
そもそも215系の運用範囲が限られていたこともあるが、「ホリデー快速ビューやまなし」号には専用の幕が存在していた。
215系車内の座席配置は、グリーン車は首都圏を走る普通列車のグリーン席と同様の2+2列シートだが、普通車はボックスシートとなっている。
215系の普通車に特別な券無しで乗車できるのは、晩年は下り湘南ライナーの大船-小田原間と、ホリデー快速ビューやまなし号の1〜3・8〜10号車のみであった。かつて東海道線の快速アクティーや湘南新宿ライン(新宿⇔横須賀の便)の列車で乗車した記憶もあるが、遠い昔の記憶である。
4・5号車のグリーン車車内では、E217系とほぼ同様に、フロア内1箇所に停車駅等を案内するLED表示器があり、途中停車駅や現在停車中の駅に関する表示がされていた。
グリーン車と普通車の境目に位置するドアには、「グリーン車締切のお願い」のシールが貼られていた。少なくとも現在は東海道線ではライナーのみに利用されているため、掲示された区間通りで締め切られることは今は無いはずだが、ラッシュ時間帯にも普通・快速列車として運転されることがあった名残であろうか。
個人的に「一昔前」を感じたのは、座席や壁の配色などと共に、階段付近に設置されているライトである。明るさや雰囲気が、まさに「平成初期から運転されている車両」を感じさせる。
グリーン車2階席からの車窓
中央本線の景色を2階建て車両から眺められるのは、ホリデー快速ビューやまなし号ならではのことであった。よく考えたら中央線快速列車の12両編成化後は大月以東?に2階建てグリーン車が導入されるのだが、甲府盆地を2階建車両で駆け抜けるのは、なかなか珍しい体験であったかもしれない。
少し高いところから見下ろしている、というのは、すれ違う列車(特にE353系あずさ号・かいじ号)を眺めたり、通過・停車する駅のホームや駅名標を見た時に特に感じられることであった。
ところで「ホリデー快速ビューやまなし号」上り列車のダイヤ上の特徴として、相模湖駅停車中に後続の「あずさ・富士回遊44号」に追い抜かれる、というものが挙げられる。あくまで快速列車なので特急に1回追い抜かれるのは自然なことだが、2020年度のその特急は、比較的停車駅が多い上に大月駅で富士回遊号を連結したあずさ号であった、というのが地味に面白い。
新宿駅6番線到着
高尾や三鷹といった今では特急あずさ・かいじ号が停車しなくなった駅にも停車しながら、定刻の18:55、新宿駅6番線に到着した。6番線というのは、中央線特急用のホーム(9・10番線)ではなく、山手貨物線系統の列車(成田エクスプレスなど)が中心に発着するホームである。
ホリデー快速ビューやまなし号が到着してからそれほど時間もたたないうちに、反対側5番ホームにはE257系踊り子号が到着した。2019年度までは251系スーパービュー踊り子10号(池袋or大宮行き)、2020年度はE257系踊り子18号(池袋行き)が、到着直後の215系ホリデー快速ビューやまなし号と並ぶダイヤとなっていた。それこそスーパービュー踊り子号の時代は、先頭車が2階建て型となっている異なる車種が並ぶ瞬間でもあった。
平成初期あたりをピークに生まれ続けた2階建て車両への乗車機会がまた一つ遠のいていく今日この頃であるが、この機会にホリデー快速ビューやまなし号に乗車することが出来て良かったと思う。
首都圏通勤車のグリーン車こそ当面残り続けるとは思われるが、今秋引退予定のE4系や、まだまだ走り続けるとは思うが寝台特急サンライズ号への乗車機会も大事にしていきたい。