昨日11月30日、相鉄・JR直通線および羽沢横浜国大駅の開業からちょうど1年となった。
本記事では、相鉄JR直通線開業の効果や主な出来事、走行場面などについて、やや偏った視点にはなるが様々な点から振り返ってみたい。
2019年11月30日 開業
2019年11月30日、JRと相鉄の相互乗り入れが開始された。
1日46往復の列車が相鉄線の海老名とJR線の新宿(以北)を直通し、二俣川⇔新宿間を最短44分、海老名⇔武蔵小杉間を最短36分などで結ぶようになった。
直通列車の車両としては、JR直通向けに製造された相鉄12000系と、元々JR埼京線を走っていたE233系7000番台が使用されており、(日中は)相鉄12000系・E233系が概ね2:3の割合で使用されている。
直通列車は、この日新設されたJR・相鉄の境界駅である「羽沢横浜国大」駅を経由する。JR側は貨物線を通り鶴見駅付近・新川崎駅付近を経て武蔵小杉駅の横須賀線ホームへ、相鉄側は西谷-羽沢横浜国大間の相鉄新横浜線先行開業区間を経由する。
なお羽沢横浜国大からは西谷方面のみ区間列車が存在し、早朝に羽沢横浜国大の西谷行き・海老名行きが計4本、夜に羽沢横浜国大行きが計2本走っている。いずれも、相鉄線内完結の列車にもかかわらず原則としてE233系が充当される運用となっている。
また、輸送障害時等にJR線や相鉄線の列車がそれぞれ羽沢横浜国大で折り返しとなるケースも偶に発生している。双方の乗務員の都合などもあるものと思われる。
埼京線新宿以北への直通も
相鉄からJR方面に向かう列車は、1日46本中40本は新宿止まりだが、平日・土休日共に朝ラッシュ時の1日6本が埼京線新宿以北(赤羽・武蔵浦和・大宮・川越)まで直通する。またJRから相鉄方面に向かう列車も、朝ラッシュ時に武蔵浦和や指扇(土休日のみ大宮・川越)始発の海老名行きが設定されている。
なお、新宿以北まで直通する列車には、原則としてJR車であるE233系が充当される。開業直後に12000系が武蔵浦和方面の列車として運転されたこともあったが、今のところ例外中の例外である。
武蔵小杉駅横須賀線ホームの朝ラッシュ混雑緩和に貢献(増発効果)
相鉄からJRへの直通列車は、停車駅としては武蔵小杉駅からJR線に入り、湘南新宿ライン(・埼京線)と同じ線路を通って新宿方面に向かう。
直通列車が停車する武蔵小杉駅の横須賀線ホームは、元々朝ラッシュ時の混雑が問題となっていた場所でもあり、相鉄直通列車の流入でより混乱するのではないかとの懸念もあったが、実際には新宿方面への列車が大幅に(湘南新宿ラインと合わせて横須賀線品川・東京方面並に)増発されホーム滞留人数が減る効果があり、(コロナ禍前の時点で)以前のような改札前の大行列といった状態はほとんど見られなくなった。
相鉄のダイヤも大変化!特急/快速の西谷停車、通勤特急/通勤急行新設も
このダイヤ改正で、相鉄のダイヤのみならず種別・停車駅も大きく変化した。
まず特急・快速が、相鉄JR直通列車との接続を取れるように西谷駅に停車するようになった。その一方、急行は多少本数が減りつつもこの西谷駅を通過する形で残された。
また、平日朝ラッシュ時上り限定で(主に)いずみ野線湘南台始発の優等列車である通勤特急・通勤急行の運転も開始された。通勤特急はいずみ野線内を通過運転しつつ、二俣川駅でJR直通の特急に接続を取る。
全体的にJR直通方面の列車への接続に便宜が図られつつ、
2020年1月6日 新宿駅発着ホーム、夕方のみ3番線に変更
相鉄・JR直通線の開業に伴い埼京線のダイヤも変更となり、快速の停車駅追加や各駅停車の運転区間短縮などが行われた。また新宿駅のホーム運用も変化し、相鉄直通の列車の多くが新宿駅の2番線で折り返すようになったため、JR埼京線の大宮方面に向かう新宿発着の列車は多くの時間帯で3番線のみでの短時間折り返しが行われるようになった。
特に問題となったのが夕ラッシュ時の3・4番線の混雑で、埼京線始発待ち・湘南新宿ラインや埼京線通勤快速待ちの列が共にホームに滞留してしまうため、特に18〜19時台頃の列車到着直前は身動きが取れないほどの混雑となってしまった。
これに関しての改善が早速行われ、開業1ヶ月後・年始初の平日ダイヤとなる1月6日より、17時以降の相鉄線・埼京線の始発ホームを入れ替える措置が取られた。夕ラッシュ以降は、発車方向でなく到着方向でホームの島が決定されるような形である。実際、相鉄方面の列車は新宿始発時点では比較空いている(入線時の待ち行列も少ない)こともあり、ホーム混雑は幾分か改善されたと言える。また、大宮方面に向かいたい乗客が勘違いで3番線の相鉄直通の列車に乗りそうになる場面も見られるが、放送等による「この列車は池袋・大宮方面には参りません」という案内もなされている。
緊急時は新宿駅5・6番線発着となることも
埼京線や湘南新宿ライン等に大きな遅れが発生し、特に新宿折り返しの列車を増やす必要が発生した場合などに、普段は一部の特急・ライナー等のみが利用する新宿駅5・6番線が臨時で使用されることがある。埼京線や湘南新宿ラインの列車が入線することもあるが、毎時2〜3本程度が折り返し、かつ新宿駅発着時点で(埼京線や湘南新宿ラインと比べて相対的に)空いていることも多い相鉄直通の列車が5・6番線発着に回される機会も見られるようになった。
5・6番線ホームはかなり代々木駅寄りにあり、またJR南口改札から直接繋がっていないなど、新南口改札方面の利用者以外にとっては不便な場所であるが、元々非常に混雑している埼京線・湘南新宿ラインよりは相鉄直通列車を5・6番線発着に回したほうが影響が少ないのは確かだと思われる。
2020年5月30・31日 渋谷駅ホーム移設工事に伴う大崎折り返し
JR渋谷駅の埼京線ホーム移設に伴い、5/30・31の2日間は埼京線・湘南新宿ラインの大崎-新宿間が終日運休となった。相鉄JR直通列車もこの区間を通るため、この2日間は終日大崎折り返しの列車となり、相鉄線内でも「大崎行き」という珍しい行き先が見られることとなった。
なおこの2日間は緊急事態宣言明け初の週末でもあり、ある意味久々の「鉄道イベント」でもあった。一般の乗客もそれなりに戻ってきたように見えた。
この工事により、渋谷駅の埼京線ホームは山手線のすぐ横に移動した。相鉄JR直通の列車からも、渋谷の中心街や(正月の銀座線ホーム移設もあり)東京メトロ銀座線への乗り換えが格段に便利となったのだった。
主な場面
武蔵小杉-羽沢横浜国大間は貨物線経由
相鉄JR直通列車は、武蔵小杉駅付近の分岐から貨物線に入り、新川崎駅や鶴見駅のすぐ横を通過していく。専用のホームは無いものの、既存の路線のすぐ近くを通るため、他路線の車両とすれ違う・並走することも多い。
特に京急の花月総持寺駅(直通開始時は花月園前駅)付近では、貨物線の線路が京急や東海道本線・横須賀線・京浜東北線の線路と併走しており、また鶴見線との立体交差もある。乗車しながら、あるいは沿線から相鉄JR直通列車を眺めるのは、なかなか楽しめるものがある。
相鉄線を走るJR車
相鉄線内(相鉄本線)では、「新宿」といった都心の行き先表示が見られるようになったり、またそもそもJR車であるE233系がよく見られるようになった。
JR直通列車は特急として運転されることも多く、あるいは直通の各停と横浜発着の特急を乗り継ぐケースも発生するため、相鉄線内の利用者にとってもE233系が重要な役割を持つ車両になったと言える。
JR直通列車のほとんどは、西谷駅で横浜方面の列車と接続し、また二俣川駅で湘南台方面の列車と接続するケースも多い。
先日引退した新7000系とも約1年間ではあったがよく対面で並んでいた。
まとめ
以上、開業1周年となった相鉄JR直通線について、一部観点ではあるが、ある程度網羅的に振り返ってみた。
相鉄・JR直通列車は他の相鉄線・JR線の列車に比べれば現在でも比較的空いており、(コロナ禍で定期券切り替えが想像以上に進まなかった面もありつつ)ラッシュ時には比較的混雑を避けられる列車として利用できる一方、夕方以降の上り列車や土休日などは1車両に数人以内レベルの乗車率という場合も少なくない。この利用率が適正かはなんとも言えないところだが、引き続き、あるいは今以上に、直通の良い面が活かされ、また各沿線のネットワーク全体の利便性が向上していくことを望みたい。
また相鉄は、2022年度下期(2022年秋〜2023年春頃)にも東急線との直通を開始し、東急目黒線やその先の地下鉄、あるいは東急東横線渋谷方面とも1本で結ばれることになる。相鉄・JR直通線とは競合関係になるとも言えるが、より直通本数が多くなる予定というのも含め、そちらへの期待が高まるところでもある。