時勢の影響もあり、この週末5/16(土)よりJR西日本の一部在来線特急の減便が開始されている。減便対象となっているのは、概ね元々1時間に1本以上運転される区間のある系統で、今回取り上げるサンダーバード号は定期列車25往復中11往復が運休(14往復が運転)で6割弱の運転本数となっている。
サンダーバード号は大阪-金沢(・和倉温泉)間を走る特急で、未だに緊急事態宣言下にある大阪府・京都府と、既に解除された福井県、解除済みだが特定警戒都道府県に入っていた石川県を結んでいる。いずれにしても、府や県をまたぐ移動については緊急事態宣言解除後も自粛要請が続くと思われ、したがってサンダーバード号を長距離乗車する旅客は、当面は最小限必要な程度になるとは思われる。
本記事では、サンダーバード号の運休について少し詳しく見ることで、その実態について考察してみたい。
サンダーバード号減便の概要
運休となるサンダーバード号の詳細は、JR西日本のサイト「≪在来線(特急・快速)の運休する定期列車≫」に掲載されている時刻表で調べることができる。詳しい時刻についてはあくまでこちらをご参照いただきたい。
上記時刻表や事前に発表されたプレスリリース*1でも分かるように、運休対象となったのは下り「1・7・11・17・21・27・31・35・39・43・47」号、上り「4・8・12・16・20・26・30・34・40・44・48」号である。なお、17・20号は金沢-和倉温泉間のみ運転される。
号数をよく見るとわかるように、2列車連続で間引きされることはなく、必ず「1〜2列車運転される度に1本運休」というパターンになっている。運休列車前後も、ほとんどの場合は1時間〜1時間半間隔では運転されるようにはなっており、なるべく移動が極端に不便になる時間帯が無いように工夫されている、と見ることもできるだろう。
停車駅ごとに停車本数を調べてみると
ところで、サンダーバード号の停車駅パターンは様々であり、全列車が停車するのは「大阪・新大阪・京都・福井・金沢」の5駅のみだ。主要駅と言える敦賀でも(定期列車では)1日上下4本ずつは通過し、半数程度が停車する駅もあれば、1日数本程度だったり特定の時間帯のみ停車する駅もある。
サンダーバード号は大雑把に見て速達タイプ・停車駅の多いタイプが両方存在し、交互に走るような時間帯もある。運休となる列車次第では、一部停車駅に止まる列車が少なくなっているかもしれない。
そこで実際に調べてみたところ、サンダーバード号の駅ごとの停車本数の減り方は以下の表のようになった。
下り | 上り | |||
減便前 | 減便後 | 減便前 | 減便後 | |
大阪 | 25本 | 14本 | 25本 | 14本 |
新大阪 | 25本 | 14本 | 25本 | 14本 |
高槻 | 4本 | 2本 | 5本 | 3本 |
京都 | 25本 | 14本 | 25本 | 14本 |
堅田 | 4本 | 2本 | 3本 | 2本 |
近江今津 | 4本 | 2本 | 3本 | 2本 |
敦賀 | 21本 | 12本 | 21本 | 12本 |
武生 | 15本 | 8本 | 15本 | 8本 |
鯖江 | 11本 | 5本 | 11本 | 4本 |
福井 | 25本 | 14本 | 25本 | 14本 |
芦原温泉 | 14本 | 5本 | 14本 | 8本 |
加賀温泉 | 17本 | 8本 | 15本 | 7本 |
小松 | 17本 | 10本 | 16本 | 8本 |
松任 | 3本 | 0本 | 3本 | 1本 |
金沢 | 25本 | 14本 | 25本 | 14本 |
約4割(44%)減の約6割(56%)運転なので、結果的に停車本数が半数程度になるのはある意味順当とも言える。ただ、その中でも停車本数が特に抑えられたのが「鯖江」「芦原温泉(下り)」「松任」の3駅であろう。特に松任駅は、上下3本ずつ停車していたのが上り1本のみの停車となってしまった。
特に間隔の開く駅と時間帯
また停車本数が減少した駅において、その一部では停車時間帯に非常に大きな変化が見られた。
下り午後の福井・石川県内
下り25号(大阪13:42発)〜最終日の49号(大阪20:54発)の時間帯は、完全に運転列車と運休列車が交互になっている。特に、運転される列車のうち29・33・37・41号は停車駅が5〜9駅(大阪・金沢含む)程度の速達タイプであり、一方で運休となった27・31・35・39号は停車駅が10駅以上の列車である。
この結果、長時間サンダーバード号が停車しない駅が生じたのである。具体的に、武生・加賀温泉には29号から45号まで約4時間15分間サンダーバード号が停車せず、鯖江・芦原温泉に至っては25号から45号までの約5時間15分間である。通常ならこの間、3〜4本のサンダーバード号が停車するにもかかわらず、である。このほか、松任駅にも夜に2本停車していたが、いずれも運休対象の列車となっている。
上り午前中の福井・石川県内
また、上りの早い時間帯にも同様のことが言える。上り2号(金沢5:35発)〜22号(金沢12:14)の間も運転と運休が完全に交互となっているが、運転列車のうち2号の金沢-武生間と6・10・14号は停車駅が非常に少ない一方、運休となった4・8・12・16号あたりは比較的停車駅が多い列車である。
この結果、加賀温泉・芦原温泉に最初に停車する上りサンダーバードは18号で、時刻は11時台となっている。鯖江に至っては22号の13:15まで上りの停車列車が存在しない。2号が停車する武生駅も、6:32から11:55までサンダーバード号が停車しないことになっている。
敦賀停車が2時間開くタイミングも
元々25往復中21往復が停車していた敦賀駅は、減便ダイヤ下では14往復中12本の停車となっている。敦賀通過便は半数が運転・半数が運休となった形である。
2往復残った敦賀を通過する列車の前後はすべて運休となっているため、そのようなタイミングでは敦賀駅にサンダーバード号が2時間以上停車しないことがある。具体的に、下りは5号(敦賀9:03)〜13号(11:03)、33号(18:01)〜41号(20:07)、上りは6号(8:01)〜14号(10:16)、42号(19:16)〜50号(22:04)のタイミングで間隔が開いている。
運休の代替手段は
このようにサンダーバード号の運休のされ方をみると、駅によっては非常に不便になっているようにも見える。JR東日本の新幹線の場合(5/28以降減便予定)では減便する代わりに停車駅の多い列車が運転されたり、東海道新幹線でも停車駅の多いひかり号・こだま号は原則として運休になっていない。減便対象となった在来線特急の中でも、やくも号は生山・根雨の2駅に関しては臨時停車による救済がある。しかし、サンダーバード号では停車駅が必ずしも考慮されているとは言えない単純な間引きであり、臨時停車などの措置も行われていないようだ。
加賀温泉・芦原温泉あたりは観光地でもあるため、関西方面からの観光需要を狙ったような時間帯(午後の下り、午前の上り)の停車が減らされるのは意図が読み取れないでもない。しかし、それらの駅を含めた地元住民による通勤等に必要な移動が無いというわけでもないだろう。
敦賀-金沢間であれば
ただし実際には、少なくとも福井・石川県内の敦賀-金沢間の移動であれば停車本数激減による影響は最小限だと考えられる。それは、同区間を毎時1本の「しらさぎ」号が運転されており、こちらは運休対象となっていないためである。
しらさぎ号の停車駅パターンは非常に安定しており、敦賀-金沢間においては全列車が「敦賀・武生・鯖江・福井・芦原温泉・加賀温泉・小松・金沢」に、それも毎時1本ほぼ等間隔で停車する。さらに、停車するサンダーバード号がほぼ運休となった松任駅にも、上下4本ずつのしらさぎ号が停車する。
よって敦賀-金沢間(福井・石川2県内)の移動においては、一部のサンダーバード号しか停車しない駅でも半数程度の特急停車本数が確保されていることになり、サンダーバード号の運休を補完できている状態と考えられる。またサンダーバード号の運転時間帯外だが、「ダイナスター」号、あるいは平日運転の「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」も引き続き運転される。
加賀温泉や鯖江などから大阪方面への直通列車は時間帯によっては大幅に減ったものの、福井や敦賀まで一旦普通列車やしらさぎ号で出るか、米原経由東海道線や新幹線というように代替手段が無いわけではない。あるいは移動可能性の議論には反するが、そういう需要が減っている・抑えたい状況下ではあるだろう。
まとめ
以上、サンダーバード号の減便ダイヤについて、各停車駅の停車本数という観点から考察してみた。その是非はともかくとして、実際に停車本数・時間帯について駅ごとにかなり事情が違っているため、この状況下でサンダーバード号を利用する必要がある場合には、普段以上に事前の確認が必要となるだろう。
いずれにしても、現時点では不要不急の外出を抑えつつ、一刻も早く緊急事態宣言、そして外出自粛要請が安心して解除される状態になるのを願うばかりである。
*1:北陸新幹線「つるぎ」、在来線特急今後の運転計画について(JR西日本 2020/5/8)