やくも号減便ダイヤの分析と、山陽新幹線接続・四国方面特急との関係

岡山と出雲市を結ぶ特急「やくも」号は、現在2時間に1本の運転となっている

岡山と出雲市を結ぶ特急「やくも」号は、現在2時間に1本の運転となっている

前回の記事でサンダーバード号の減便ダイヤについて扱ったが、岡山と出雲市を結ぶ特急「やくも」号もまた、5/16(土)より減便となっている特急の1つである。やくも号は15往復中7往復が運休(8往復が運転)で、簡単に言えば元々1時間毎の運転だったのが2時間毎になっている、という状態だ。

やくも号の通る岡山県鳥取県島根県については既に緊急事態宣言が解除されている地域ではあるが、各県から不要不急の県をまたいだ移動に対しての自粛要請は一応続いている。一方、関西圏で明日にも緊急事態宣言か解除されそうな動きがあり、またJR東日本が減便ダイヤを撤回するのではという報道も出ている状況で、そう遠く無い時期に減便ダイヤが解除される可能性自体はある。

本記事では、やくも号の減便ダイヤについて少し詳しく見た上で、同じく岡山を起点とする四国方面への特急との対比、山陽新幹線との接続についても言及してみる。

やくも号減便の概要

運休となるやくも号の詳細は、JR西日本のサイト「≪在来線(特急・快速)の運休する定期列車≫」に掲載されている時刻表で調べることができる。また、米子支社発表版で新幹線接続ダイヤなども記載された「在来線特急「やくも」今後の運転計画について」も存在する。詳しい列車ごとの時刻についてはあくまでこれらをご参照いただきたい。

交互に運休となり2時間毎の運転

上記時刻表や事前に発表されたプレスリリース*1にも記載されているように、運休対象となったのは下り「5・9・13・17・21・25・29」号、上り「4・8・12・16・20・24・28」号である。

やくも号はほぼ1時間毎の運転となっているが、運休列車の号数を見てわかるように運転・運休が交互となっており、2時間毎の運転となっている。厳密には、上りは完全に交互(2時間毎)で、下りは始発から2便が運転した後に2時間毎運転となり、元々終電だった29号(岡山21:40→出雲市0:37)は運休で現在は27号(岡山20:05→出雲市23:08)が最終列車となっている。

なお、パノラマ型グリーン車付きの編成(で走る場合がある列車)が元々1日4往復走っており、先日のダイヤ改正後は「2・3・12・13・16・17・26・27号」が該当していたが、そのうち12・13・16・17号は運休対象となっている。2・3・26・27号については公式サイト掲載中の減便ダイヤ時刻表(pdf)にも「パノラマ型グリーン車・但し、パノラマ型でない日があります」と記載されている。

交互停車だった生山・根雨は臨時停車で救済

プレスリリースには「※生山駅には7~27号が臨時に停車」「※根雨駅には6~26号が臨時に停車」と記載されている。これは文字通り・より詳しく言えば、下り便のうち生山駅を通過していた7・11・15・19・23・27号が生山に臨時停車する、上り便のうち根雨駅を通過していた6・10・14・18・22・26号が根雨駅に臨時停車する、という意味である。

なぜこのような措置がとられたのかの推測だが、やくも号は元々交互に生山駅根雨駅に停車するようなダイヤであり、今回のような2本に1本のペースでの運休となると、どちらかの駅にやくも号が停車しなくなってしまう。そこで、両駅でほぼ通常通りの停車本数とするために臨時停車の措置がとられたものと思われる。また、生山駅根雨駅は3駅分しか離れていないものの、伯備線の山間部でありその区間を走る普通列車が非常に少ない(1日10本強程度で、3時間ほど開くこともある)ため、代替手段が取りにくいというのも理由の一つかもしれない。

ちなみに上り一部列車が根雨駅に臨時停車した結果、多くの場合には根雨駅で上下線両列車が同時に停車し交換することになる。現在のダイヤでは多くの時間帯で根雨駅でやくも号が交換していると推測されるが、その場合でも片方停車・片方通過というパターンになっていた。

上りは玉造温泉宍道にも臨時停車あり

またプレスリリース時点では明記されていなかったが、上り一部列車で宍道駅玉造温泉駅にも臨時停車が行われているようだ。

宍道駅は、上りは元々14・18・22号の1本おき3列車のみが通過となっていたが、これら3本が全て運転列車となりつつその直前直後の列車が運休となったことで、このままだと宍道駅に停車する上りやくも号は10号(宍道8:42発)から26号(宍道16:42発)まで8時間も開くという状態になってしまう。それを回避するために臨時停車の措置が取られたようだ。また、玉造温泉駅も元々ダイヤだとやくも22号(+運休のやくも24号)が最終停車列車となっていたためか、やくも26号が玉造温泉に臨時停車する形となっている。

停車駅ごとの停車本数比較

臨時停車も数多く存在したが、ここ改めて各停車駅において停車本数がどのように変化したのかを確認してみたい。次の表は、やくも号が停車する各駅の減便前後での停車本数である。

  下り 上り
減便前 減便後 減便前 減便後
岡山 15本 8本 15本 8本
倉敷 15本 8本 15本 8本
総社 3本 2本 3本 1本
備中高梁 15本 8本 15本 8本
新見 15本 8本 15本 8本
生山 7本 7本
(1+6)
8本 8本
根雨 7本 7本 7本 6本
(0+6)
伯耆大山 7本 3本 5本 3本
米子 15本 8本 15本 8本
安来 15本 8本 15本 8本
松江 15本 8本 15本 8本
玉造温泉 8本 5本 9本 6本
(5+1)
宍道 14本 8本 12本 8本
(5+3)
出雲市 15本 8本 15本 8本

やくも号は全列車が「岡山・倉敷・備中高梁・新見・米子・安来・松江・出雲市」に停車している。最速列車が倉敷-米子間ノンストップだったような一時期に比べれば全停の駅が多くなったが、今回のような不測の事態を考えると元々主要各駅に必ず停車しているのは安心要素とも言える。一方、一部列車のみが停車している駅が、総社・生山・根雨伯耆大山玉造温泉宍道といった駅になる。ここでは、まだ言及していない駅について、簡単に言及しておく。

総社駅は、もともと1日上下3本ずつという限定的な停車となっていた。3本停車時間帯も概ね朝・昼・夜に1本ずつという形だったが、結果的に下り11・27号、上り30号のみの停車となった。

伯耆大山駅は、鳥取方面への接続も意識される形で下り夕方以降7本連続、上り朝始発から5本連続が停車しており、いずれもそれが2本に1本の割合で運休となったという形である。なお具体的には上下とも3本ずつの停車になった形だ。

岡山起点の四国方面特急の減便ダイヤとの関係性

やくも号と同じく、岡山から出ている在来線特急のうち減便ダイヤとなっているのが、四国方面の特急「しおかぜ」号と「南風」号である。

しおかぜ号・南風号は、やくも号同様に元々毎時1本程度の運転となっていたが、これまたやくも号同様に完全に2本に1本のペースで運転・運休となっている。ちなみにそれと同時に、アンパンマン列車やうずしお号併結列車はちょうど運転される形となっている。

やくも号と南風号は、元々基本的に下りが岡山駅毎時05分発、上りは岡山駅毎時40分頃の到着でほぼ統一されている。一方、今回の減便ダイヤにあたって運転・運休列車のタイミングはそれぞれちょうど被らない形となったようだ。具体的には、下りやくも号の運休は「9:05発、11:05発、13:05発、…」の便であった一方、南風号の運休は「7:08発、10:05発、12:05発、14:05発、…」の便となっている。上りも同様の状態だ。

このことによって少なくとも結果的には、新幹線との接続にあたってやくも号・南風号の両方に接続するような列車が混雑しやすい、といったような偏りが防がれる効果もある。(もっとも、時勢および元々の乗客の絶対数、編成の長さなどを考えると本当に新幹線に影響するほどのものでは無いかもしれないが…)

岡山での山陽新幹線接続

米子支社発表の減便ダイヤ時刻表内にも現在の具体的な接続列車の時刻が記載されているが、やくも号から接続する山陽新幹線の列車・時刻は基本的に普段と変わっているという点に注意が必要である。特に、元々東京方面からの最速接続であった山陽直通ののぞみ号は新大阪止まりとなっているので、実際に岡山駅で乗り換えられるのは1本早い/遅いのぞみ号となり、東海道新幹線方面との所要時間は20分ほど増加することになる。(ただし実際には、新大阪でさくら号・ひかり号に乗り継ぐことで普段と同じのぞみ号を利用することも一応可能である。)

このような事態なので現時点で乗り継ぎ需要は普段に比べれば少ないとは思うが、いずれにしても実際に利用することになった場合には、普段とは違う乗り継ぎ方法・余裕を持った行動を意識しておかなければならないだろう。

まとめ 

以上、やくも号の減便ダイヤについて、いくつかの観点から分析・考察を行ってみた。

現時点では不要不急の県境越えの移動を抑えつつ、一刻も早く緊急事態宣言、そして外出自粛要請が安心して解除される状態になるのを願うばかりである。