※以前掲載した記事の再編集版となります。
岡山-出雲市間を結ぶ特急やくも号。今でも国鉄型特急車両の381系が使用されているが、中でもそのうち2編成がパノラマ型グリーン車を出雲市寄り先頭車に持つ編成である。「やくも号」を紹介する写真としてこのパノラマ型グリーン車の編成が用いられていることも多く、象徴的な列車である。
そしてパノラマ型グリーン車編成のスジは決まっており、2020年3月13日までは下り「やくも7・9・23・25号」、上り「やくも6・8・22・24号」の2運用・4往復であった。(このうち、やくも6・7・22・23号は、検査時等にパノラマ型運用で無いことがある。)
ところがJR時刻表によると、3月14日のダイヤ改正後はやくも号のダイヤに大きな変更は無い一方、パノラマ型グリーン車の運用が変化する。具体的には下り「3・13・17・27号」、上り「2・12・16・26号」となる。また今まで4往復中2往復が「パノラマ型でない日があります」となっていたが、今回は全4往復に対してその注釈がついており、パノラマ型編成に実際に出会える確率は若干下がるものと思われる。(推測でしかないが、該当車両の定期検査等の時期と重なるのかもしれない。)
本記事では、やくも号の象徴とも言えるパノラマ型グリーン車編成の設定列車を、改正前・後それぞれ紹介する。旅行計画等のお役に立てば幸いである。
やくも号パノラマ型グリーン車の歴史
本題に入る前に軽く、今までのパノラマ型グリーン車編成に関する経緯を紹介する。
1994年の登場時は、パノラマ型グリーン車を持つ編成は「スーパーやくも」として運転され、停車駅は最も少ないもので「倉敷・米子・松江」のみ、など速達列車として設定された。
その後、スーパーやくも号が4往復から約半数の7往復(やくも号と交互)に増え、パノラマ型グリーン車でないスーパーやくも号も登場した。そして2006年、全列車が「やくも」号となり、「スーパーやくも」号の名は消えた。運転時間も均等化され、スーパーやくも号が両方通過・やくも号が両方停車していた生山・根雨の両駅は1本ずつ交互に停車するようになった。また、2007年にはパノラマ編成が比較的先行的に「ゆったりやくも」化改造され、塗装も今のものに変更となった。
スーパーやくも号時代以降、伝統的に「岡山9時頃・11時頃発の下り列車」がパノラマ型グリーン車編成で、その前後に続く同じ運用の列車計1日4往復がパノラマ型グリーン車編成の運用であった。2列車の間に1本、普通のやくも号を挟む形である。時期によって岡山や出雲市での折り返し時間が違うため1〜3時間程度のズレはあったが、概ね同じ場所・同じ方向では概ね似たような時間帯にのみパノラマ型の姿を見ることができた*1。
2016年3月26日以降・現在までの4年間は下り岡山10時台・11時台発およびそれに続く運用に変更となり、連続2列車でパノラマ型が走るようになった。
今回、パノラマ型グリーン車の該当列車が改めて変更になることで、今までには乗れなかった・見られなかったタイミングでパノラマ型グリーン車編成が走る時間帯もある。
改正前(2016-20年)のパノラマ型グリーン車編成該当列車
まず一つの記録として、2020年3月13日までのパノラマ型運用を紹介する。
下り(7・9・23・25号)
岡山 | 出雲市 | 停車駅 | |
※やくも7号 | 10:04 | 13:07 | 倉敷、備中高梁、新見、根雨、米子、安来、松江、玉造温泉、宍道 |
やくも9号 | 11:04 | 14:10 | 倉敷、備中高梁、新見、生山、米子、安来、松江、玉造温泉、宍道 |
※やくも23号 | 18:04 | 21:15 | 倉敷、備中高梁、新見、根雨、伯耆大山、米子、安来、松江、宍道 |
やくも25号 | 19:04 | 22:10 | 倉敷、備中高梁、新見、生山、伯耆大山、米子、安来、松江、宍道 |
※やくも7号、23号はパノラマ型で運転しない日がある。
上り(6・8・22・24号)
出雲市 | 岡山 | 停車駅 | |
※やくも6号 | 6:27 | 9:38 | 宍道、玉造温泉、松江、安来、米子、伯耆大山、生山、新見、備中高梁、倉敷 |
やくも8号 | 7:22 | 10:35 | 宍道、玉造温泉、松江、安来、米子、伯耆大山、根雨、新見、備中高梁、倉敷 |
※やくも22号 | 14:33 | 17:38 | 玉造温泉、松江、安来、米子、生山、新見、備中高梁、倉敷 |
やくも24号 | 15:30 | 18:38 | 宍道、玉造温泉、松江、安来、米子、根雨、新見、備中高梁、倉敷 |
※やくも6号、22号はパノラマ型で運転しない日がある。
パノラマ型グリーン編成の運用(2016/3/26〜2020/3/13)
- 出雲市6:27【6号】9:38岡山10:04【7号】13:07出雲市14:33【22号】17:38岡山18:04【23号】21:15出雲市(※パノラマ型で運転しない可能性あり)
- 出雲市7:22【8号】10:35岡山11:04【9号】14:10出雲市15:30【24号】18:38岡山19:04【25号】22:10出雲市
岡山3・4番線到着後は一旦引き上げた後、発車数分前に2番線に入線する。また出雲市駅では次の運転までに1時間半近くあるが、一旦西出雲の先にある車庫に引き上げている。
出雲市駅14:20頃の数分間は、やくも9号が3番線で回送出発待ちの間に、やくも22号が2番線に入線する。2編成とも動いていればパノラマ型グリーン車付き編成が2本並ぶことになる。先程の写真はそのタイミングでに撮影したものである。
なお2016-20年の4年間は、年数回運転される臨時サンライズ出雲91号が出雲市到着(13:07着)の3分後にパノラマ型やくも7号が出雲市到着(普段13:07着から時刻変更で13:10着)、サンライズ出雲92号出雲市発(15:33発)の3分前にパノラマ型やくも24号発車(15:30発)というダイヤになっており、いずれも出雲市駅のホームに両列車が在線するという瞬間はあった。次回ゴールデンウィークのサンライズ出雲91・92号運転時は、普通のやくも号車両と並ぶことになると考えられる。
展望に向いていた列車
前面展望が特に楽しみやすかったのは、午前中に岡山を出る岡山10:04発やくも7号、岡山11:04発やくも9号の2本である。前者のやくも7号の場合、新幹線ならのぞみ5号(東京6:30発、新大阪9:05発、岡山9:50着)、のぞみ12号(博多8:10発、広島9:17発、岡山9:52着)あたりが接続列車となり、関西圏のみならず首都圏や九州からも当日中に乗車に向かうことが可能であった。
下りの他の機会は岡山18:04発のやくも23号、岡山19:04発のやくも25号となる。夏なら出発時点では一応明るかったが、今から改正までの時期の間だとほぼ終始暗い時間帯となる。
後面展望で座席も基本的には前向きのためパノラマの味わいやすさとしてはやや難があるが、上りは4本とも比較的明るい時間帯を走っていた。出雲市発が朝2本・昼過ぎ2本(新幹線乗り継ぎで当日中に東京や博多へ到着可)というタイミングであった。
改正後のパノラマ型グリーン車該当列車
ここからが本題。改正後は、現在とはまったく違うスジ4往復でパノラマ型グリーン車編成が走ることになる。今までパノラマ型編成が(ほぼ)走らなかったような時間帯の列車も設定されている。
下り(3・13・17・27号)
岡山 | 出雲市 | 停車駅 | |
※やくも3号 | 8:05 | 11:04 | 倉敷、備中高梁、新見、根雨、米子、安来、松江、宍道 |
※やくも13号 | 13:05 | 16:09 | 倉敷、備中高梁、新見、生山、米子、安来、松江、玉造温泉 |
※やくも17号 | 15:05 | 18:15 | 倉敷、備中高梁、新見、生山、伯耆大山、米子、安来、松江、玉造温泉、宍道 |
※やくも27号 | 20:05 | 23:08 | 倉敷、総社、備中高梁、新見、根雨、伯耆大山、米子、安来、松江、宍道 |
※いずれの列車も、JR時刻表で「パノラマ型でない日があります」とされている。
上り(2・12・16・26号)
出雲市 | 岡山 | 停車駅 | |
※やくも2号 | 4:42 | 7:41 | 宍道、松江、安来、米子、伯耆大山、生山、新見、備中高梁、倉敷 |
※やくも12号 | 9:34 | 12:39 | 宍道、玉造温泉、松江、安来、米子、根雨、新見、備中高梁、倉敷 |
※やくも16号 | 11:34 | 14:39 | 宍道、玉造温泉、松江、安来、米子、根雨、新見、備中高梁、総社、倉敷 |
※やくも26号 | 16:30 | 19:39 | 宍道、松江、安来、米子、生山、新見、備中高梁、倉敷 |
※いずれの列車も、JR時刻表で「パノラマ型でない日があります」とされている。
パノラマ型グリーン編成の運用(2020/3/14〜)
- 出雲市4:42【2号】7:41岡山8:05【3号】11:04出雲市11:34【16号】14:39岡山15:05【17号】18:15出雲市(※パノラマ型で運転しない可能性あり)
- 出雲市9:34【12号】12:39岡山13:05【13号】16:09出雲市16:30【26号】19:39岡山20:05【27号】23:08出雲市(※パノラマ型で運転しない可能性あり)
改正後のパノラマ型グリーン車の列車を追ってみると、出雲市駅での折り返し時間が約1時間半から2〜30分程度と短縮されていることが分かる。過去の実例から考えると、パノラマ型運用に限らずやくも号は、この改正では「出雲市駅のホーム上で折り返す」パターンが基本になる可能性がある*2。また、同じ編成が同じ方向で見られる時間が8時間後→7時間ごと短縮されているので、やくも号全体の運用数が抑えられることになると考えられる。
なお、やくも12号は出雲市9:34発だが、京都5/8(金)発運転開始の下りWEST EXPRESS銀河の出雲市到着時刻は9:31とされている*3。それぞれの発着ホームは現時点では不明だが、もしかしたら5/9(土)等WEST EXPRESS銀河の運転日(出雲市到着日)には出雲市駅でパノラマ型のやくも号とWEST EXPRESS銀河の並びが見られるかもしれない。また上りWEST EXPRESS銀河の出雲市出発時刻は16:00なので、おそらく直江駅でやくも13号と行き違いになる他、その後の運転時刻*4を考えると、比較的序盤でやくも26号がWEST EXPRESS 銀河を追い越すことになると思われる。
展望オススメ列車(2020/3/14〜)
明るい時間に走る下り列車という観点で言うと、岡山8:05発のやくも3号、岡山13:05発のやくも13号、岡山15:05発のやくも17号、の3回に増えることになる。特にやくも17号は宍道湖付近を夕方17時台後半に走るため、季節によっては夕陽の美しい宍道湖をパノラマ車から楽しむことも可能になるだろう(一基準として、日没時刻とちょうど重なるのは10月・1〜2月頃)。
遠方からの新幹線接続としては、やくも3号は大阪や広島からなら早朝に出れば間に合い、やくも13号・17号は午前中のうちに東京や博多を出発して乗り継げるようなタイミングである。
パノラマ的には後面展望となるが、上りは出雲市9:34発の12号、出雲市11:34発の16号が比較的乗りやすい時間となる。特に12号は先述のWEST EXPRESS銀河の他にサンライズ出雲号(定刻なら宍道駅で行き違い)ともすれ違うので、その意味でも楽しめる人もいるかもしれない。
(スーパー)やくも2号がパノラマ編成だった時期は何回かあったが、再度上り始発やくもに適用されることになった。いずれにしても、早朝初で狙いにくい(特に山陰の時点では空いている)列車ではある。また、出雲市16:30発やくも26号は途中で夕暮れを迎えるが、岡山から新幹線乗り継ぎで一応その日のうちに東京に着くことができる列車となっている(最終のぞみ接続は1本後のやくも28号)。
なお繰り返しになるが、時刻表の表記によればいずれの列車も毎日パノラマ型グリーン車で走るとは限らないので、その点ばかりは注意が必要だ。
まとめ
以上、パノラマ型グリーン車編成のやくも号の改正前後の運転時刻を掲載し、乗車イメージをいくつか記した。改正後については一部推測事項も含まれるので(特にWEST EXPRESS銀河関連)、実際の運用等とは異なる可能性もあるのでご了承いただきたい。
伯備線特急やくも号は2022年度頃には新車投入が開始されるともされており、381系のパノラマ型グリーン車を楽しみたい方は是非この1〜2年のうちに訪れてみてはいかがだろうか。
*1:JR時刻表2006年3月号によると、2006年2月25日のみスーパーやくも17・14号がパノラマ型で運転との表記があり、突発的に普段と違う列車に設定されることも全く無かった訳では無さそうだ。
*2:ただし出雲市17:17着のやくも15号から出雲市17:18発のやくも28号は折り返しになり得ないなど、時間帯によって運用法が変わると考えられる。
*3:JR西日本春臨プレス・米子支社春臨プレスによる。ただし岡山支社春臨プレスでは9:28表記だった。
*4:岡山支社春臨プレスによると、上りWEST EXPRESS銀河は備中高梁21:25着なので、それまでの間にやくも26・28・30号に追い抜かれることになる。